子供の頃、僕はろくに授業を聞いていない生徒でした。教室の隅でぼーっと窓の外を眺め、先生が黒板に向かって何かを話している間も、僕の頭の中はゲームのことでいっぱいでした。
ある日、母に「今日は何を習ったの?」と聞かれたときのこと。僕はこっそり授業を録音したテープを再生し、母にそれを聞かせている間に、自分はテレビでドラえもんを見ていました。もちろん、後でバレて「ちゃんと授業を聞きなさい!」とこっぴどく叱られました。
そんな僕が、算数や英語以外で、はっきりと「学んだ」と記憶している最初のテーマ。それが「貯金」でした。
先生たちは、まるで聖書の言葉かのように、こう言いました。
「お金を貯めなさい」
彼らは、無計画にお金を使ったせいで、路上生活をすることになった人たちの話をしました。そういう人たちは無謀で、無責任で、どうしようもない浪費家なのだと。
そして僕は、その言葉を信じました。
お年玉、お昼ごはん代、道で拾った小銭。かき集められるだけのお金を、僕は貯めるようになりました。
それは賢くて、責任感のある行動のように感じました。「計画性のある大人」に一歩近づいたような、誇らしい気持ちでした。
しかし、今振り返ると、あの頃ひたすらお金を貯めていたことは、僕が人生で犯した最悪の金銭的判断でした。
貯金が悪だと言いたいわけではありません。問題は、僕が貯金を「一時的な手段」ではなく、「人生の戦略」そのものだと勘違いしてしまったことです。
なぜ、お金を貯めるのか?
彼らは「お金を貯めろ」と言いました。
でもある日、僕はふと疑問に思ったのです。
「政府がもっと多くのお金を刷り続けているのに、どうして僕たちはお金を貯めるんだろう?」
希少なダイヤモンドを大切に保管する意味はわかります。運命の人との関係を大切にする意味もわかります。でも、世の中に溢れるほど印刷されているものを、なぜ必死に貯め込む必要があるのでしょうか?
アメリカの有名な投資家、ナヴァル・ラヴィカントはこう言っています。
「富を求めよ。お金や地位ではなく。富とは、あなたが寝ている間にも稼いでくれる資産のことだ。お金とは、時間と富を交換するための道具だ。地位とは、社会の階層におけるあなたの場所のことだ。」
お金は、時間と富を交換するための「道具」にすぎません。
使われずに眠っているお金は、いわば「働いていない時間」です。そして、働いていない富は、もはや富とは呼べません。
もしあなたが、自分の時間を何もせずに無駄に過ごすことにイライラするのなら、なぜ自分のお金を何もせずに眠らせておくことには平気でいられるのでしょうか?
お金があなたの時間や富を保存しておくためのものなら、なぜただ貯めておくだけなのですか? なぜそのお金を使って、さらなる富を生まないのですか?
もし何もしなければ、その価値はインフレによって静かに食いつぶされていくだけです。
富裕層は、お金を「使います」。だからこそ、彼らが豊かなのだとわかります。彼らのお金は、いつも彼らのために働いているからです。
眠っているお金は、死んでいくお金です。
「貯金しなさい」という言葉は、お金のアドバイスではありません。それは、私たちの思考を縛り付けるための「精神的な刷り込み」なのです。
貧乏は、重力のようなものだ
社会は、貧しい人々と富裕層に、それぞれ違うルールを教えます。富裕層には「戦略書」を。貧しい人々には「きれいごと」を。
貧しい人々が教わること:
- 「お金を貯めなさい」
- 「毎日のコーヒーを我慢しなさい」
- 「もっと節約しなさい」
富裕層が実践していること:
- 「レバレッジ(てこの原理)を築きなさい」
- 「自分の時間を買い戻しなさい」
- 「専門知識を育てなさい」
- 「収入を生むエンジンに投資しなさい」
富裕層はディフェンス(守り)のゲームはしません。彼らはオフェンス(攻め)の仕組みを築くのです。
イーロン・マスクはこう言っています。
「PayPalの売却で1億8000万ドルを手にした。私はそのうち1億ドルをスペースXに、7000万ドルをテスラに、1000万ドルをソーラーシティに投じた。自分の家賃は、借金して払ったよ」
彼らは、お金を使って時間を買い、影響力を買い、さらにお金を生み出すシステムを買います。一方で、その他の人々は、小銭を貯め込み、ただ幸運を祈るように教えられているのです。
貧しいと、あらゆる面で高くつきます。
- 豊かな人は年払いで割引を受けるツールを、月々割高な料金で払う。
- 一括で買えないもののために、高い利子を払う。
- お金だけでなく、時間とエネルギーというコストを払う。
- 常に欠乏感と戦い、心の平穏というコストを払う。
貧乏は、まるで重力です。
あなたを常に下へ下へと引きずり込み、判断力を鈍らせ、反応を遅くします。すべてが「生き残るため」の行動になり、良い決断ではなく、「素早い決断」しかできなくなるのです。
あなたは「お金を展開(運用)する方法」を学ぶべきだったのに、「貯め込む方法」だけを教えられてきました。
貯金は、今あるものを維持することはできても、何かを築いたり、育てたり、大きくしたりはできません。
富を自由にする5つのアクション
「あなたのお金が働いていないのなら、働かされているのはあなたの方だ」
農民のようにただお金を貯めるのをやめて、王様のように富を築くために、今日からできる5つのことを紹介します。
1. 目的もなく「貯める」のをやめる
貯金がアイデンティティになると、それは牢獄になります。あなたは木の実を隠すリスではなく、兵士を指揮する将軍なのです。
目的を持って貯めましょう。それは「展開するため」「投資するため」「再投資するため」の貯金です。
「万が一のため」に貯めるのではなく、「〜するまで」貯めるのです。
- レバレッジが買えるまで。
- 自己投資できるまで。
- 手元の現金が、新たな現金を生むようになるまで。
将来が不安なら、貯金するよりも、どんな状況でも稼げるスキルを身につける方がよほど安泰です。
2. すべてのお金に「仕事」を与える
あなたの時間には、すでに値段がついています。ただ、それを決めているのがあなたではないだけです。
もしあなたの時給が1万円なら、2時間かかる作業を外注するのに2万円以下のコストで済むなら、それは「買い」です。あなたは割引を追いかけるのをやめ、レバレッジ(より少ない労力で大きな成果を得ること)を追いかけるようになります。
お金は、命令されるのが大好きです。放置されるのは、優秀なアスリートをベンチで腐らせるようなもの。
お金をいくつかの「バケツ」に分けましょう。
- 再投資: ツール、スキル、効率化のため
- 成長: 広告、人材、事業拡大のため
- 生活防衛: 最低限の生活費、緊急資金
- 娯楽: 心から楽しむためのお金
使命を与えられたお金は武器になります。計画のないお金は、ただの負債です。
3. モノではなく「時間」を買う
貧しい人々はステータス(見栄)を買い、豊かな人々はスペース(余白)を買います。精神的な余白、スケジュールの余白、エネルギーの余白です。
彼らは、300時間を節約できるツールがあるなら、毛皮のコートや豪華なパーティーにお金を使いません。なぜなら、お金よりも時間の方が、はるかに速く複利で増えていくことを知っているからです。
あなたの人生を次のレベルに引き上げるのは、新しい服ではなく、あなたがどれだけ自分の時間をコントロールできるかにかかっています。
4. 自分自身を「商品化」する
不労所得を追いかけるのはやめましょう。その代わりに、「再現性のある収入」を作り出すのです。
- テンプレート
- オンライン講座
- ノウハウを体系化したもの
- デジタルコンテンツ
一度作れば、何度も売れる仕組みです。これらにチームは必要ありません。必要なのは規律だけです。
初心者が最初に投資すべきは、株でも不動産でもビットコインでもありません。最高の投資対象は、あなた自身、あなたのスキル、あなたの知識です。これらは絶対に価値がゼロにならない、唯一の資産です。
自分に投資すれば、結果は自分でコントロールできます。失敗も成長も、すべて自分のものになります。
5. 自分の「信念」を資産のように守る
ほとんどの人の「お金に対する信念」は、お金に苦労した親や、 働きすぎの先生、将来を恐れる友人から受け継いだものです。
もしあなたが「貯金こそが安定だ」と信じているなら、あなたは人生のスタート地点から一歩も動けずに終わるでしょう。
今日から、新しい信念を築き始めてください。
- 「お金は、明確な目的がある場所に流れてくる」
- 「利益は、優先順位に従う」
- 「眠っているお金は罪だ」
あなたの信念は、あなたの知識よりも強力です。信念は、それ自体を現実化させるマシンだからです。
「どうせ自分には無理だ」という悲観的な考えは、悪い結果を引き起こし、その結果が「ほら、やっぱり無理だった」という悲観論をさらに強化します。これが貧乏を生み出す、目に見えない信念の正体です。
では、脚本を書き換えてみましょう。
「自分は10億円稼げる人間だ」と本気で信じてみてください。その信念が、あなたを10億円稼ぐための行動へと突き動かすのを観察してみてください。
これは妄想ではありません。思考が現実を創るのです。
最後に
もしあなたが豊かになりたいのなら、危険なほどに規律を持つ必要があります。
あなたの集中力に、お金に、そして思考に。
貯金は悪ではありません。
しかし、それがあなたの唯一の戦略であるなら、あなたは「負けないための戦い」をしていることになります。そして、そのゲームは、結局は負けるようにできています。
「勝つための戦い」を始めましょう。
貯め込むのではなく、築き上げるのです。